需要予測をエクセルで行う方法とは?計算手順や食品業界との関連性をわかりやすく解説
「需要予測を始めたいけれど、専用ツールを導入するほどの予算はない」とお悩みではないでしょうか。実は、エクセルでも需要予測は可能です。FORECAST関数やTREND関数、予測シート機能など、エクセルの標準機能だけで将来の需要を予測できます。
特に食品業界では、需要予測の精度が利益率や廃棄ロスに直結します。予測が外れれば、過剰在庫による廃棄や、欠品による販売機会の損失が発生してしまうためです。
本記事では、エクセルを使った需要予測のやり方、需要予測の計算方法、食品業界で需要予測が重要な理由や運用時の課題までをわかりやすく解説します。
エクセルを使った需要予測のやり方
エクセルで需要予測を行うには、まず必要なデータを準備します。日別・週別・月別などの期間と、その期間の販売数量を対象にした過去の販売実績データを、時系列で整理しておきましょう。
<エクセルの管理イメージ>

必須項目は日付・製品コード、数量、価格等は任意項目になります。
データが準備できたら、以下の関数や機能を使って需要予測を行います。
FORECAST関数を使って計算する
基本構文 =FORECAST(x, known_y’s, known_x’s)
FORECAST関数は、過去データの傾向をもとに将来の数値を予測するエクセル関数です。xに予測したい時点、known_y’sに過去の販売数量の範囲、known_x’sに過去の期間の範囲を指定すると、予測値が算出されます。
比較的少ないデータでも利用しやすく、需要予測の入門として活用しやすい関数です。

TREND関数を使って計算する
基本構文 =TREND(known_y’s, known_x’s, new_x’s)
TREND関数は、過去データからトレンド(傾向)を分析し、複数期間の予測値をまとめて算出できる関数です。new_x’sに予測したい複数の期間を指定することで、来月・再来月といった連続した予測値を一度に求められます。
将来の売上や需要を連続して予測したい場合に便利です。

SLOPE関数を使って計算する
基本構文 =SLOPE(known_y’s, known_x’s)
SLOPE関数は、データの増減傾向(傾き)を算出する関数です。1期間あたりに販売数量がどれだけ増減しているかを数値で把握できます。
直接需要予測を行う関数ではありませんが、需要の増加・減少トレンドを把握する際に役立ちます。

予測シート機能を使う
「予測シート」機能を使えば、専門知識がなくても需要予測を行えます。
使い方は簡単で、データ範囲を選択し、「データ」タブから「予測シート」をクリックするだけで利用可能です。グラフと予測結果を自動生成できるため、関数を組む手間なく予測値を視覚的に確認できます。
なお、予測シートの内部的には指数平滑法(FORECAST.ETS)が活用されています。

需要予測の計算方法とは
エクセルの関数や機能の背景には、統計的な需要予測の計算方法があります。代表的な4つの手法を紹介します。
移動平均法
移動平均法は、過去一定期間の販売実績の平均値を算出し、将来の需要を予測する手法です。
需要予測の中でも比較的シンプルで、エクセルでもAVERAGE関数を活用して簡単に実践できます。
指数平滑法
指数平滑法は、過去のデータに重み付けを行い、直近の販売実績をより重視して予測する手法です。古いデータよりも新しいデータを重視するため、最新の需要変化を予測に反映しやすい特徴があります。
エクセルのFORECAST.ETS関数は、この指数平滑法を利用した需要予測機能です。
回帰分析
回帰分析は、販売数量と関連する要因(気温・降水量・広告施策・価格など)の関係性を分析し、需要を予測する手法です。
過去の推移を延長するだけの予測とは異なり、「何が売上に影響しているのか」を把握できる点が特徴です。エクセルでは回帰分析機能(分析ツール)を利用できます。
季節変動分析
季節変動分析は、季節やイベントによる需要変動パターンを分析して予測する手法です。夏の飲料需要や年末の催事商品など、周期的な需要の波を予測に織り込めます。
季節商品の比重が大きい食品業界では、特に重要な需要予測手法の一つです。エクセルのFORECAST.ETS関数でも、季節性を考慮した予測が可能です。
需要予測とは?
ここで改めて、需要予測とは何かを整理しておきましょう。
需要予測とは、過去の販売実績や市場動向、季節要因などのデータをもとに、将来の商品需要を予測することです。食品業界では「いつ・どの商品が・どれくらい売れるか」を予測し、適切な生産・仕入れ・在庫管理につなげるために活用されています。
食品業界での具体例としては、以下が挙げられます。
- コンビニのお弁当や惣菜の製造数
- スーパーの季節商品の仕入れ量
- パンやスイーツの生産計画
いずれも「作りすぎれば廃棄、足りなければ機会損失」という判断を日々迫られる場面であり、需要予測の精度が収益を左右します。
食品業界で需要予測が重要な理由
食品業界において需要予測が重要な理由は、大きく3つあります。
1. 食品ロスを削減できる
食品業界では、扱う商品に賞味期限・消費期限があるため、過剰在庫はそのまま廃棄につながります。
過去の販売実績や季節要因をもとに需要を予測することで、作り過ぎや仕入れ過ぎを防止できます。食品ロス削減はコスト削減だけでなく、環境負荷の軽減や企業イメージ向上にもつながる取り組みです。
2. 欠品による販売機会損失を防げる
需要予測を活用することで、売れるタイミングに十分な在庫を確保できます。
欠品が発生すると、本来得られたはずの売上を逃してしまいます。特に人気商品や季節商品の欠品は、顧客満足度の低下や機会損失につながりかねません。
天候やイベント、過去の販売データを考慮した需要予測によって、こうした欠品リスクを軽減できます。
3. 生産・仕入れ計画を最適化できる
需要予測を行うことで、過剰生産・過少生産のリスクを抑えられます。必要な量を見込んで動けるため、工場の稼働計画や人員配置、原材料調達の効率化にもつながります。
需要予測は、食品メーカーや食品卸、小売業など幅広い業態で活用できます。特に食品業界では原材料価格の変動や人手不足への対応が求められるため、需要予測にもとづく計画的な運営が重要です。
エクセルで需要予測を行うメリット
需要予測の手段としてエクセルを選ぶメリットは、次の3つです。
1. 導入コストを抑えられる
エクセルによる需要予測は、専用の需要予測ツールやAIシステムと比較して初期費用を抑えられます。
コスト負担が小さいため、小規模事業者や、需要予測を初めて導入する企業でも取り組みやすい方法です。
2. すぐに分析を始められる
エクセルなら、販売実績データがあれば、すぐに需要予測を開始できます。新たなシステム導入や環境構築が不要なためです。
前述のとおり、エクセル標準機能(FORECAST関数、TREND関数、予測シートなど)を利用できるので、思い立ったその日から予測を試せます。
3. 自社に合わせてカスタマイズしやすい
エクセルは自由度が高く、自社の商品や業務フローに合わせて自由にフォーマットを作成できます。
必要な項目や計算式を追加・変更しやすく、商品カテゴリ別や店舗別など、自社の管理方法に応じて運用できる点もメリットです。
エクセルで需要予測を行う際の課題
一方で、エクセルでの需要予測には課題もあります。運用前に押さえておきたい4つの課題を解説します。
1. データ量が増えると管理が難しくなる
商品数や店舗数が増えるほど、管理するデータ量も膨大になります。データ入力や集計作業に時間がかかり、担当者の負担が増加します。
また、ファイル容量の増大による動作遅延や管理ミスも発生しやすくなります。複数店舗・複数拠点のデータを統合して分析する場合、エクセルだけでは運用が煩雑になりやすい点に注意が必要です。
2. 属人化しやすい
エクセルでの需要予測は、特定の担当者しか運用方法を理解していない状態になりやすいのも課題です。
担当者の異動や退職によって運用が停滞するリスクがあり、複雑な関数やマクロを利用している場合はさらに属人化が進みやすくなります。
3. 気象データや販促情報を反映しづらい
需要は気温や天候、販促キャンペーンなどの外部要因に大きく左右されます。
エクセルでもこうした要因を含めた分析は可能ですが、外部データの収集や連携を手作業で行う必要があります。気象データやイベント情報を継続的に取り込むには工数がかかる点が課題です。
4. 予測精度に限界がある
関数や予測シートは過去データをもとに予測を行うため、急激な市場変化への対応が難しく、新商品や販売実績の少ない商品は予測精度が低くなりやすい傾向があります。
また、人手によるデータ入力ミスや更新漏れも予測精度低下の要因となります。食品業界では天候や流行、社会情勢など予測が難しい要素が多いことも、エクセル運用の限界として押さえておきましょう。
食品業界で需要予測の精度を高めるポイント
食品業界で需要予測の精度を高めるには、以下の4つのポイントが重要です。
1. 商品ごとに予測手法を使い分ける
すべての商品を同じ手法で予測すると、精度が低下する可能性があります。商品特性に応じて適切な予測手法を選択することが重要です。
- 定番商品:移動平均法
- 需要変動が大きい商品:指数平滑法
- 気温や販促の影響を受ける商品:回帰分析
- 季節商品:季節変動分析
2. 季節要因やイベント要因を考慮する
食品業界の需要は、季節やイベントの影響を大きく受けます。猛暑による飲料需要の増加や、クリスマスケーキ需要の急増などが代表例で、過去の販売実績だけでは正確な予測が難しいケースがあります。
過去のイベント時の販売データを活用することで、予測精度を高められます。
3. 定期的に予測結果を検証する
需要予測は一度作成して終わりではなく、継続的な改善が重要です。
予測値と実績値の差異を定期的に確認し、予測が外れた原因を分析して、予測モデルや計算方法を見直しましょう。検証を繰り返すことで、自社に適した予測ルールを構築できます。
4. 生産・在庫・販売データを一元管理する
精度の高い需要予測には、正確なデータが不可欠です。
生産・在庫・販売データがバラバラに管理されていると、分析精度が低下します。データを一元管理することで、最新情報をもとに予測を行えるようになります。
需要予測で専門ツールの活用が求められるケース
以下のようなケースに当てはまる場合は、エクセルではなく専門ツールの活用を検討しましょう。
1. 商品数が多い
商品数(SKU数)が増えるほど、エクセルでの需要予測管理は煩雑になります。商品ごとに販売実績の集計や予測計算を行う必要があり、作業工数が増大するうえ、データ入力ミスや更新漏れも発生しやすくなります。
特に食品業界では、商品ごとに賞味期限や販売サイクルが異なるため管理負荷が大きくなりがちです。数十商品程度であればエクセルでも対応可能ですが、数百〜数千SKUになると運用が難しくなるケースが多いでしょう。
2. 多店舗展開している
店舗ごとに販売傾向や需要が異なるため、多店舗展開している場合は予測業務が複雑化しやすくなります。各店舗の販売実績を集約・分析する作業にも時間がかかります。
エクセルで店舗別データを管理するとファイル数が増え、情報の一元管理が難しくなる点も課題です。チェーン店やスーパー、食品小売業では特に課題になりやすいポイントです。
3. 需要予測に時間がかかっている
データ収集や集計、予測計算に多くの時間を費やしている場合は、改善の余地があります。
エクセルではデータ更新や分析作業を手作業で行うケースが多く、担当者が毎週・毎月長時間かけて需要予測を行っている場合、生産性低下につながります。その結果、本来注力すべき分析業務や改善施策に時間を割けなくなってしまいます。
4. 予測精度を高めたい
エクセルによる需要予測では、過去の販売実績を中心とした分析になりやすく、気象データや販促情報、イベント情報などを十分に反映できない場合があります。
食品業界では天候や季節要因による需要変動が大きく、予測精度が利益に直結します。欠品や過剰在庫が頻発している場合は、予測方法の見直しが必要です。
需給調整なら「需っ給さん」がおすすめ
エクセルでの需給調整に限界を感じたら、食品製造業向けクラウドシステム「需っ給さん」がおすすめです。
需っ給さんとは、現場と経営の課題解決のための食品製造業向けクラウドシステムです。欠品による機会損失や売上減少、過剰在庫によるキャッシュフロー悪化といった、食品製造業の問題解決を目的としています。
需っ給さんでは、以下のことができます。
- PSI管理
- 賞味期限管理
- ロット管理
食品業界に特化して20年の企業だからこそ提供できる、業界唯一の需給調整システムです。エクセル運用に課題を感じている方は、ぜひ一度お問い合わせください。
まとめ
エクセルでも需要予測は実施可能です。FORECAST関数やTREND関数、予測シート機能などの標準機能を使えば、コストを抑えてすぐに需要予測を始められます。
ただし食品業界では、季節変動や商品数増加によってエクセル運用の負荷が高くなります。より高精度な需要予測や発注最適化を目指すなら、「需っ給さん」のような専用ツールの活用がおすすめです。



専門家のコメント
食品メーカーを取り巻く環境は、人手不足や原材料価格の高騰、法令遵守など複雑化しています。
特に、突発的な外的要因によって需要が大きく変動する商品では、原材料や資材の調達が非常に困難となります。
一方で、特売や大口注文などの「間欠需要」に対しては、時系列予測やAIを活用しても予測精度が十分に高まらないのが現状です。
これは、連続的な実績データが必要であることや、外的要因と自社の販売実績との因果関係を明確に証明することが難しいためです。
したがって、まずは「定常需要」に対する予測精度を高めることが重要です。
勘や経験に頼らず、需要予測の属人化を防ぐためにも、AIや数理モデルを活用した運用が不可欠です。