システムの属人化とは?発生する原因・リスクと解消する方法を解説
「このシステムは担当者しか触れない」「トラブルが起きても特定の人にしか対応できない」といった状況に心当たりはありませんか。
これはシステムの属人化と呼ばれる状態で、放置すると担当者の退職とともに業務が止まるリスクを抱えることになります。本記事では、システムの属人化が発生する原因やリスク、解消する方法、継続的に防ぐポイントまでをわかりやすく解説します。
システムの属人化とは
システムの属人化とは、社内システムの操作・設定・保守・管理などが、特定の担当者の知識や経験に依存している状態のことです。
「担当者しかシステムの操作方法を知らない」「トラブルが発生した際に特定の人しか対応できない」「設定内容や仕様が文書化されていない」といった状態が該当します。
システムそのものだけでなく、Excel・マクロ・業務ツールなどを特定の担当者が作成・管理しており、ほかの従業員が仕組みを把握できていないケースも属人化といえます。
問題となるのは、システムに関する情報・ノウハウ・作業手順が共有されず、「その人がいなければ業務を継続できない」状態です。
業務の属人化との違い
システムの属人化と混同されやすい言葉に、業務の属人化があります。それぞれの違いは以下のとおりです。
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 業務の属人化 | 業務の進め方・判断基準・ノウハウなどが 特定の担当者に依存している状態 |
特定の担当者しか顧客対応の方法や 作業手順を把握していない |
| システムの属人化 | システムの操作・設定・保守・管理などが 特定の担当者に依存している状態 |
特定の担当者しかシステムの設定変更や 障害対応ができない |
業務の属人化は「仕事そのものが人に依存している状態」、システムの属人化は「業務を支えるシステムの運用・管理が人に依存している状態」と整理できます。
システムが属人化する主な原因
システムが属人化する主な原因は、以下の4つです。
- システムの操作・管理方法が複雑
- マニュアルやドキュメントが整備されていない
- システムを管理できる人材が不足している
- 古いシステムを長期間使用している
1. システムの操作・管理方法が複雑
長期間の運用やカスタマイズによって、システムが複雑化しているケースです。
操作・設定に専門知識や経験が必要になり、結果として経験豊富な担当者へ業務が集中します。
2. マニュアルやドキュメントが整備されていない
操作方法・設定内容・トラブル対応などが、担当者の頭の中にしかない状態です。
「見ればわかる」「担当者に聞けばいい」という状態が続くことで、属人化が進行します。引き継ぎ時にも問題になりやすい原因です。
3. システムを管理できる人材が不足している
情報システム部門の人員不足やIT人材不足を背景に、特定の担当者へ負担が集中しやすくなります。
中小企業では、いわゆる「一人情シス」が属人化につながるケースもあります。
4. 古いシステムを長期間使用している
レガシーシステムでは、仕様を理解している社員が限られます。
ベンダーのサポート終了などによって、社内の特定担当者に依存する可能性も高まります。担当者の退職によって、システムがブラックボックス化するリスクもあります。
システムの属人化によって生じるリスク・デメリット
システムの属人化を放置すると、以下の5つのリスクが生じます。
- 担当者の不在・退職によって業務が止まる
- システムトラブルへの対応が遅れる
- システムのブラックボックス化が進む
- 不正やミスを発見しにくくなる
- DX・システム刷新が進めにくくなる
1. 担当者の不在・退職によって業務が止まる
システムの操作・管理方法を特定の担当者しか把握していない場合、その担当者が不在になると業務を進められなくなる可能性があります。
休暇や急な欠勤だけでなく、異動・休職・退職などによって、長期間担当者が不在になるケースもあります。
日常業務に欠かせない基幹システムや、生産管理・在庫管理などのシステムが属人化していると、事業全体に影響が及ぶ可能性があります。
2. システムトラブルへの対応が遅れる
システムの仕様や設定、過去のトラブルへの対応方法を特定の担当者しか知らない場合、障害発生時の対応が遅れやすくなります。
担当者が不在の場合、原因の特定や復旧作業を進められず、システム停止が長期化する可能性があります。
システム障害が長引けば、受発注・在庫管理・生産管理など、関連する業務にも影響が広がります。
3. システムのブラックボックス化が進む
属人化が続くと、システムの仕様・設定内容・運用方法などを組織として把握できない、ブラックボックス化が進みます。
長年使用しているシステムでは、改修やカスタマイズを繰り返すうちに「なぜこの仕様になっているのか」を説明できる人が限られてきます。
担当者の経験や記憶だけを頼りに運用していると、退職・異動した際に重要なノウハウが失われてしまいます。
4. 不正やミスを発見しにくくなる
誤入力や設定ミスが発生しても、ほかの従業員が仕組みを理解していなければ、問題の発見が遅れる可能性があります。
システムの操作権限が特定の担当者に集中している場合、不適切なデータ変更などが行われても気づきにくくなります。
「担当者しかわからない」という状態では、作業内容の妥当性を組織として検証することも難しくなります。
5. DX・システム刷新が進めにくくなる
新しいシステムへ移行する際には、現行システムの機能・データ・業務プロセスなどを整理して要件を定める必要があります。
しかし、これらの情報を特定の担当者しか把握していない場合、現状把握や要件定義に時間がかかります。
ブラックボックス化が進んでいると、既存システムのどの機能が必要なのか判断できず、不要な機能や非効率な業務まで新システムに引き継いでしまう可能性もあります。
専門家のコメント
得意先からの注文データの仕様が変更になり、手動で自社のシステムへ入力せざるを得なくなり、処理の遅れや担当者の負担が増加することになりました。
注文データを受信するAccessを改修できる人が1名のみだったことが原因です。
システムの属人化がもたらす利点とは
一方で、属人化には利点もあります。すべての業務から属人化を排除することが正解とは限りません。
システムを属人化するメリットは、以下のとおりです。
- 熟練者が担当することで、短期的には業務を効率よく進められる
- 担当者の知識・経験によって柔軟な判断ができる
- マニュアル化しにくい高度な業務では、一定の専門性が必要になる
すべての業務で属人化を完全に排除する必要はありません。あえて属人化させることが有効なケースとしては、以下が挙げられます。
- 高度な専門知識・経験が求められる業務
- 新しいシステムの立ち上げ・検証段階
- 業務フローが頻繁に変化する段階
ただし、「担当者しかできない状態」と「専門担当者がいる状態」は異なります。専門性の高い担当者を置く場合でも、ノウハウ・データ・手順については組織で共有できる状態を作っておくことが重要です。
システムの属人化を解消する方法
システムの属人化は、以下の7ステップで解消していきます。
- 属人化している業務・システムを洗い出す
- 業務フローを標準化する
- マニュアル・ドキュメントを整備する
- 複数人でシステムを管理できる体制を構築する
- データ・情報を一元管理する
- システム・ITツールを活用して業務を自動化する
- 古いシステムの刷新・移行を検討する
1. 属人化している業務・システムを洗い出す
まず、誰が・どのシステムで・どの業務を担当しているかを可視化します。
「その担当者が1か月不在でも業務を継続できるか」などを基準にチェックしましょう。
属人化による影響度・緊急度を整理して、対応の優先順位を決めることが重要です。
2. 業務フローを標準化する
担当者ごとに異なる操作・手順を整理し、標準的な業務フローを決めます。
このとき、不要な作業そのものを見直してから標準化することが重要です。非効率な作業をそのまま標準化してしまうと、無駄が固定化されてしまいます。
3. マニュアル・ドキュメントを整備する
操作方法だけでなく、「なぜこの作業が必要なのか」も記録しましょう。
システム設定・権限・トラブル対応・例外処理なども残しておくことが大切です。
あわせて、定期的に更新する担当者・ルールも決めておきます。
4. 複数人でシステムを管理できる体制を構築する
主担当・副担当を設定し、複数人で管理できる体制を整えます。
ジョブローテーションやクロストレーニングを実施することで、担当者不在でも業務を継続できる状態を作れます。
5. データ・情報を一元管理する
個人PCやローカルExcelなどでの管理をやめ、データの保存場所・管理ルールを統一します。
誰が見ても最新の情報を確認できる環境を構築することが重要です。
6. システム・ITツールを活用して業務を自動化する
手作業・個人判断に依存している業務をシステム化しましょう。
入力・集計・共有などを自動化することで、担当者への依存を減らせます。
クラウド型システムなら、複数人がリアルタイムで情報を確認・更新できます。
7. 古いシステムの刷新・移行を検討する
老朽化・複雑化したシステム自体が属人化の原因なら、マニュアル整備だけでは限界があります。
クラウドシステムやパッケージなどへの移行も選択肢の一つです。
システムの刷新は、業務プロセスそのものを見直す機会としても活用できます。
専門家のコメント
現状の業務フローを作成、その中でネックになっている業務を抽出し、自動化ツールを作成することで新しい業務フローでの作業効率化を支援しています。
上述の予算策定業務はまさに、この流れでご支援させていただきました。
システムの属人化を解消する際の注意点
属人化の解消を進める際は、以下の3つの注意点を押さえておきましょう。
- 属人化を一気に排除しようとしない
- マニュアルを作成しただけで終わらせない
- 担当者だけに属人化解消を任せない
1. 属人化を一気に排除しようとしない
長年の経験や専門知識が必要な業務では、担当者のノウハウによって効率や品質が保たれているケースもあります。
無理にすべての業務を標準化すると、かえって作業効率が低下したり、柔軟な判断ができなくなったりする可能性があります。
また、複数の業務を同時にマニュアル化・標準化しようとすると、現場の負担が大きくなり、本来の業務に支障が出るおそれもあります。
まずは「担当者が不在になると業務が停止する」「システム障害に対応できない」など、属人化による影響が大きい業務から優先的に解消しましょう。
2. マニュアルを作成しただけで終わらせない
属人化対策としてマニュアルを作成しても、実際に活用・更新されなければ十分な効果は期待できません。
システムの仕様や業務フローは、機能追加・設定変更・組織変更などによって変化するため、マニュアルも定期的な更新が必要です。
マニュアルを見ながら担当者以外の従業員が実際に作業できるか確認し、不足している情報があれば随時追加しましょう。
「誰が・いつ更新するのか」を決めるなど、マニュアルを継続的に管理するルールを設けることが重要です。
3. 担当者だけに属人化解消を任せない
属人化している担当者にはすでに業務が集中しているケースが多く、通常業務と並行して対策を進めると、さらに負担が増える可能性があります。
また、担当者本人だけで業務を整理すると、「自分にとっては当たり前」の手順や判断基準が抜け落ち、ほかの従業員には理解できないマニュアルになることもあります。
実際に業務を引き継ぐ従業員や管理職なども参加し、第三者の視点から業務内容・手順を整理しましょう。
システムの属人化を継続的に防ぐポイント
属人化は一度解消しても、放置すれば再発します。継続的に防ぐためのポイントを3つ紹介します。
- 情報共有を業務フローに組み込む
- 定期的に業務・権限を見直す
- 誰でも情報を確認できるシステムを導入する
1. 情報共有を業務フローに組み込む
「時間があるときに共有する」「必要になったら引き継ぐ」といった運用では、繁忙期などに後回しになりやすく、再び情報が特定の担当者へ集中する可能性があります。
システムの設定変更・トラブル対応・業務手順の変更などがあった際に、必ず内容や対応履歴を記録・共有するルールを設けましょう。
定例会議での共有、作業完了時の記録、マニュアル・FAQへの反映など、既存の業務フローの中に情報共有の工程を組み込むことが有効です。
情報の保存場所や記載方法も統一し、「どこを確認すれば最新情報がわかるのか」を明確にしておきましょう。
2. 定期的に業務・権限を見直す
半年・1年など一定のタイミングで、担当業務やシステムの管理体制を見直します。
「特定の担当者しか対応できない業務がないか」「担当者不在でも業務を継続できるか」「引き継ぎ可能な状態になっているか」などを確認しましょう。
システムのアクセス権限・管理者権限についても確認し、特定の担当者へ必要以上に権限が集中していないかチェックします。
異動・退職した従業員の権限が残っていないか、業務に対して適切な権限が設定されているかも確認しておきましょう。
3. 誰でも情報を確認できるシステムを導入する
属人化を防ぐためには、必要な権限を持つ従業員が同じ情報を確認・共有できるシステムを導入することも有効です。
クラウド型システムなどを活用してデータを一元管理すれば、「担当者に聞かなければ状況がわからない」という状態を減らせます。
複数人がリアルタイムで同じデータを確認・更新できる環境を整えることで、担当者の不在時でも業務を引き継ぎやすくなります。
更新履歴や操作履歴を確認できるシステムであれば、「誰が・いつ・何を変更したのか」も把握しやすく、情報共有や管理の透明性向上にもつながります。
ただし、システムを導入するだけでは属人化を防げないため、入力・更新ルールや権限設定などの運用方法もあわせて整備することが重要です。
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自作ツールは短期間での利用開始を優先して作られることが多く、ドキュメントが不足しているケースが少なくありません。作成者が在籍しているうちは問題になりませんが、異動や退職によって別の担当者へ引き継がれると、仕様がわからず毎回調査が必要になります。
情シス支援ラボでは、ツールの調査・解析を行い、ツール一覧やツールごとの設計書などのドキュメントを作成します。これにより属人化を解消し、全体像を容易に把握できる状態を実現します。
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食品業界のシステム開発に約20年携わってきた企業だからこそ、業界特有の業務にも対応できます。自作ツールの属人化に課題を感じている方は、ぜひ一度お問い合わせください。
まとめ
本記事では、システムの属人化が発生する原因やリスク、解消する方法、継続的に防ぐポイントを解説しました。
システムの属人化は、担当者の不在による業務停止やブラックボックス化、DX推進の遅れといったリスクにつながります。一方で、専門性の高い業務では属人化が有効に働く場面もあるため、影響の大きい業務から優先的に解消することが重要です。
解消にあたっては、業務の洗い出しから標準化、ドキュメント整備、体制構築までを段階的に進めましょう。自社だけで対応が難しい場合は、外部の運用保守サービスの活用も検討してみてください。



専門家のコメント
実際にあった事例としては、ExcelマクロとAccessを駆使して、おひとりで全社の予算策定業務を担っていらっしゃいました。
ドキュメントはなく、策定手順もその方しかわからない完全なブラックボックス状態で、引き継ごうにもExcelマクロやAccessの技術的な知見を持った方も社内に少ないという状況でした。
Excelマクロ、Accessを作った方の異動や退職でメンテナンスできなくなってしまう事例は他にも山ほどお聞きしました。